大切なのは「忘れられない」こと - 中央区 日本橋 茅場町の税理士事務所 - 細谷有子税理士事務所
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ほっと一言

所長の細谷有子のブログです。

ほっと一言
2011年10月14日

大切なのは「忘れられない」こと

金木犀の香りが漂ってくると、「アァまたこの季節がやってきた」と思う。
人の思いとは別に、自然は昨年と同じ様に巡り移り新しい季節を運んで来る。

3・11の大震災から早8ヶ月。
東北地方にも、色々な季節が通り過ぎた。雪のちらつく季節から、猛暑・台風・・・
そしてこれから迎える厳しい寒さ。
まだまだ復興もままならない状態で迎える冬はどんなであろうか。

先日B社のS社長が決算で来所された。
その際渡された名刺に

「陸前高田市市長戸羽太
付復興対応企業誘致民間投資担当」

という肩書が書かれていた。

国が全く動かない今、「民間が支援していかなくては」との思いで支援活動を始められたとか。
現在の東北地方の状況を改めて聞かせて頂いて、8ヶ月も過ぎた今まだ・・・・・と
言葉が出てこなかった。

その際頂いた本。ぜひ皆様にも読んで頂きたく思い、紹介させていただきます。

『被災地の本当の話をしよう』

戸羽太(ワニブックス【PLUS】新書)

2011年2月13日に市長になってから、1ヶ月足らずで発生した東日本大震災。
震災当日から現在に至るまでの現場の記録です。

我々も菅政権の危機感のない、スピード感のない対応を見てきて、日本の政治は一体どうなってしまったのだろうかと苛立ちを感じたものですが、この本を読んでこれ程までに日本の政府が心のない政治を行っているのかと悲しくなってしまいました。

*瓦礫処理専門のプラントを作りましょう、という提案を県に出しました。
ところが返ってきた答えは「色々な手続きが必要となるので、仮に建設にOKが出ても、建設開始までに2年は掛かります」というものでした。

*なんとかガソリンが届いたのですが・・・それを自衛隊の方が給油しようとした瞬間「このガソリンは他の省庁から出ているものだから、自衛隊が給油したらダメだ。
運ぶところまでは認めるけれど、自衛隊にノズルを触らせてはいけない!」というお達しがあったのです。

*視察に来る政治家たちも
~その方は被害状況や復興の進捗などひとことも聞かず、市役所の看板が入るところで私とのツーショット写真を撮ると、そのまままっすぐ帰ってしまいました。~
~多くの犠牲者を出し、今では廃墟状態になっている旧市庁舎に来ると「ここで写真を撮りたい」と言い出し、次の瞬間、信じられないことにVサインをしながら写真に収まっているではありませんか!~
~もちろん真剣に復興について考えてくださる方もいますけれど、震災から時間が経つにつれて、こういった失礼な人が増えました。~

などなど・・・・霞ヶ関や永田町と被災地との「埋められぬ距離」。
平時の法律や手続きを盾に、全く融通を効かせない国や役所の対応。

戸羽市長は本を出したきっかけをこう書いています

「私があえてこの時期に本を出そうと決めたのは、とにかく陸前高田市を世間の人々に忘れてほしくないからです。
復興を進めていくうえで、何がいちばん怖いかといったら、今回の震災や被災地のことを忘れ去られてしまう事です。・・・・・
何もかも失ってしまった被災地にとって、周りの方々が「気に掛けてくれること」ほどこころ強いものはありません。・・・・

ですから読者の皆さん。
陸前高田市だけでなく、多くの被災地が今もまだ瓦礫の山に埋もれて、ひどいところではライフラインも完全に復旧していないという非常事態にあり、まだまだ復興までには皆さんのお力添えが必要だということを、どうぞ心の隅に留めておいてください。

数年後、きれいになった陸前高田市で、読者の皆様とお会いできることができれば、こんなに嬉しい事はありません。
どうかその日まで、私たちの復興への闘いを温かい目で見守り続けてください。」

怒りも苛立ちも超えた後の、「忘れないで欲しい」という悲痛な叫びは何とも切なく涙がこぼれました。
日本の国は一体どうなってしまったのでしょうか?
日本の政治家は何をやっているのでしょうか?

重い話になってしまい申し訳ありません。
でも、ぜひこの戸羽市長の思いを受け止めて頂きたいと思います。